現場は安全第一

長年この仕事をしていると、現場でどうしても、 ヒヤ!っとする経験をする事がある。幸いにも当社は死者や、大怪我人を出した事はないがもう駄目だ!!って思ったことは何度かあります。一番ヤバかったのは、建設現場死亡事故原因1位の転落がらみ。その転落死しかけたのは大工で、ある新築店舗の建て方の時、地上から約3.6mの高さのコンクリートの壁の天端に105×300の持ち出しされた土台での出来事。その土台はコンクリート壁端部から2mほど飛び出ている状態で、土台はコンクリートに予め仕込んであるボルトを貫通させてナットでしっかりと締結させます。しかし、その時あってはならない事に、その土台はボルトに貫通させているだけで、まだナットの締め付けがされていない状態だったのです。そして締結されていると思い込んだ大工は、その持ち出し部の最先端にピョンと足場から飛び移り、その瞬間土台がグラッと動きバランスを崩した大工は落下しました。

しかし大工は、超スーパーな運動能力でその土台にしがみつき、一瞬セーフ!と思いきや締結されてなかった土台は断面寸法が大きい事もあり、いとも簡単に貫通ボルトをへし曲げそのままスポン!と抜け天秤状態になり 本当に終わった 、、と思いました。しかし奇跡的に支点部分の一本のボルトがなんとか持ちこたえ事なきを得たのです。ほんとに一瞬の出来事で、見てるだけしか出来なかった、、

そして、助かった!と思った途端に足が尋常ではなく、ブルブルブルブルと恥ずかしく思ったくらいに震えだしました。このように人間は恐怖や緊張した時震えますが、調べてみたところ、このメカニズムは大脳辺縁系というところに発生する 情動反応 に従う 情動性自律反応というものらしく ブルブル震わせ発熱させる事により筋肉をほぐし、逃げたり、戦ったりと、状況に速やかに対処する準備をするという我々動物が与えられた、どうしても必要な意思とは無関係に必ず発生するものらしいのです。だから僕の震えも決して恥ずべきものではなかった!この震えを止める為には、安心したり、理解したり、脳がもう大丈夫と判断した時。そして、そもそも震えを出さない為には感情のコントロールが出来ればいいのですが、これは現実的には大変難しく、それより一番は経験を積んで馴れる事なのです。少し話がそれましたが、、、、当然こんな経験を何度もしてるわけもなく、ガタガタ震えながらも、大丈夫か?!とそこまで駆け寄り一瞬にして緊迫した状況になった現場だったのですが、幸いにも大工は無傷。でも安心したのに震えが止まらない。すると、普段はあまりしゃべらない1人の大工が

みんな、一旦落ち着こう!

その言葉で嘘のように震えは止まりました。正に魔法の言葉。その後本来なら僕がそのように言葉を皆になげかければならないのにと、情けない思いをしたのを覚えています。難しいかもしれないですが、どのような分野でもピンチな時ほど冷静さを保つ事は重要です。これが出来るようになるには年齢と経験を積んでいくしかないのかもしれません。

で、その死にかけた大工、その日上棟だというのに、ヘルメットを忘れてきやがり、そんな時に限ってこのような目にあうという決して不注意だけが原因で起きたとは個人的に思えなく、これは、きっと現場の神様が、 次は知らんぞ! という僕達への警告だったのだと思っています。この様に誰も怪我する事無く安全管理の重要さの理解を更に深める事が出来たのは、結果的にではありますが ラッキー と言う外ありません。

この事件で学んだ事

  1. 作業は一つ一つ完結させる事。今回土台をナットで締結せず放置した事が原因の一つ。
  2. 高所作業では落ち着いて行動する。飛んだり、はねたりしない。
  3. 徹底した安全管理を怠っていたと現実的に理解できた事。
  4. 震えのメカニズムを詳しく知る事が出来た事。

以上

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